不定愁訴

 60代の女性です。突然動悸に見舞われ、イライラして、のぼせやほてりが強く、頭がボーとしています。全てに意欲がなく、疲れやすい。気持ちに張りがなく、落ち込んでしまい、暗い気分が続きます。家事にも手がつかず、焦るばかりで嫌悪感がこみ上げ、床に入っても寝付きが悪く、睡眠も浅い状態です。

 気分転換に友達と会話をしても楽しくなく、かえって脱力感を感じてしまうなど、不安な気持ちをとつとつと話してくださいました。このような症状はご主人が大病されてから徐々に現れたそうです。最近は、ストレスや環境などの社会的要因が複雑に絡み合って、いろいろな症状が同時に出てくることが多いようです。

 中国漢方ではこのような症状は、肝、心、腎の働きの低下や相互関係の乱れによるものと考えます。また、ホルモンのアンバランスにより、自律神経に失調をきたし、神経症の愁訴が多く感じられます。

 この方のように一般の検査では異常もないのに自覚症状だけ訴える方の多くは、「症状のつらさを分かってほしい、聞いてほしい」と思って来店されます。店内を改装して話しやすくなったコーナーで、私もゆっくり時間をかけて訴えをお聞きするようにしています。漢方処方を選ぶ際、生活の背景が深くかかわっていることが多いので、多くの方は話すことで楽になるようです。

この方には
  • 自律神経のバランスを調整する養心安神効果のあるもの
  • 不安感、不眠に有効なもの

 
 2種類の漢方薬を服用していただきました。

 1ヵ月後に来店されたときには、イライラや気分の落ち込みが改善され、不安感もとれ、少し前向きな気持ちになられたようでした。

日本中医薬研究会会員 日本不妊カウンセリング学会会員 こだいら漢方堂 大塚みどり

2004.09.07