アトピー性皮膚炎①

 アトピー性皮膚炎の特徴は、かゆみをともなう発疹が繰り返し出現することで、約80%の患者さんは、5歳までに症状が現われます。アトピー体質という遺伝的な要素が関係していると言われています。また、体質と精神面はからみ合っていて、心身のバランスが良いときは落ち着きますが、ストレスや寝不足など、望ましくない生活環境が続くと、発症することが少なくありません。

 副腎皮膚ホルモン外用剤(ステロイド)が主流として使われるようになってから40年がたちますが、ステロイド剤は正しく使用すれば優れた効果を発揮します。しかし、漠然と使い続けると、副腎は「ホルモンを作らなくてもいい」と判断して、その働きを低下させてしまいます。その結果、皮膚の萎縮や毛細血管が拡張して、赤みを帯び、ますますステロイド剤が手放せなくなります。また、ステロイド皮膚炎というやっかいな病気を引き起こすことも知られるようになりました。

 アトピー性皮膚炎の患者さんは、ほとんどの方が「ステロイド剤は使いたくない」と言いますし、現在使っている人も、いつか使わないでいられるようになりたい、と切実に願っています。本来、私たちの体は、外部から侵入したものに抵抗したり、消去したりする優れた免疫機能を備えています。これを自然治癒力といいます。環境ホルモン、ストレス、食生活の乱れなど、生活環境の変化によって、内分泌、免疫、神経システム機能を混乱させ、体のバランスを崩して、アレルギーを引き起こしています。

 冷・暖房が完備されている中にいることが多くなり、静電気やハウスダストを浴びて、常に肌が乾燥した状態に置かれると、脂肪量セラミドの含有量が少なくなり、皮膚は潤いを失います。これがドライスキンとなり、かゆみを引き起こす原因にもなります。乳・幼児アトピーのご相談で、お子さんの皮膚を見せていただくと、すでにかきむしって傷ができたり、赤く熱を持った状態になっていることがよくあります。かゆがるからといって、ステロイド剤でかゆみを100%抑えてしまうような強力な治療法は、かえって病気を長引かせてしまう恐れがあります。

 ほてりと炎症をしずめ肌に潤いを与える漢方薬は、1歳未満の乳児でも、意外に苦い錠剤を噛んで飲んでくれます。また、角質修復を助け自然治癒力を引き出す薬用保湿クリームは、べたつかず、すっと肌になじみます。アトピー性皮膚炎の方にも安心して使っていただいています。自然治癒力を生かした治療法を選択すれば早く改善すると思われる皮膚病でも、外用ステロイドを使い続けて悪化させてしまったり、赤い発疹が出たり引いたりを繰り返して、ますます悪くなっているケースが少なくありません。中医学では、その方の体質や生活環境、誘発する原因をさぐりながら、症状にあわせて「個人」の治療法を考えています。

日本中医薬研究会会員 日本不妊カウンセリング学会会員 こだいら漢方堂 大塚みどり

2006.05.07