29歳のCさんは、結婚して一年経っても子宝に恵まれなかったために、婦人科で検査をしたところ、片側卵管閉塞と診断されました。誘発剤を使い、AIHを3回、IVFを2回トライしたが妊娠に至らず、疲れ切ってしまい、治療を休んで、漢方薬で妊娠しやすい体づくりを希望されてご相談にみえた方です。
基礎体温は毎日変動し、排卵が早かったり、低温期が高かったりと、ホルモンバランスが不安定な状態を示していました。ご主人の精子には特に問題がないので、正常な片方の卵管がうまく働いてくれれば、自然妊娠も希望がもてると考えながら漢方薬を飲んでいただきました。治療に疲れ切ったとは言っても、やはりご夫婦にとっては、早く子を授かりたいと焦る気持ちと、ゆっくり体調を整えて自然妊娠を望む思いとが、揺れているようでした。
漢方薬を飲み始めて2カ月、IVFにもう一度トライしたいと計画されました。実際には体づくりをしてから半年後に受診され、誘発剤を投与開始。予定通りに進まず、移植できませんでした。当然のことですが、ご本人はとても落胆され、私も何が原因なのかもう一度、今後の方向とともに一緒に考えました。H検査結果もありましたので、原因と思われる点を改善するべく、処方を少し変えて、3月にもう一度トライしたいという思いに、今度は叶えられるように、私も願う気持ちでした。
次の周期です。「妊娠しました!」と、とても嬉しそうにご報告をいただきました。念願の自然妊娠です。奇跡的だとご本人はおっしゃっていましたが、私もこの時ほどこの仕事をしていて良かったと思ったのです。
日本中医薬研究会会員 日本不妊カウンセリング学会会員 こだいら漢方堂 大塚みどり