望む治療の方向性

 結婚3年、29歳の女性です。長年の生理不順があり、結婚後は婦人科に通いホルモン剤で周期を調節していました。元々月経(生理)が10日以上続いたり、2ヶ月も来なかったりということです。ホルモン剤で周期を調節して一年、その後は排卵誘発剤も使いましたが、赤ちゃんを授かることが叶わず、ご相談にみえました。

 この方の体質は冷え症、そして月経のリズムが一定していない無排卵周期症と考えられます。それは基礎体温を見てもわかります。 低温期がいつまでも続き、排卵がわかりにくく、高温期との差がありません。また周期によっては高温期が36.5度を下回っています。理想である36.7度以上の日が12日以上続く周期も見られました。黄体期は、内膜分泌期を表します。受精卵が子宮内膜で着床するためには、暖かい血液の分泌が必要です。理想である36.7度以上の高温期が12~14日間あるのに月経が来てしまう、つまり着床をさまたげてしまう一つの原因が、長い間続けた排卵誘発剤の影響とみることができます。排卵誘発剤は種類によっては副作用として頚管粘膜が減ったり、子宮内膜が薄くなることが知られています。

 体質や基礎体温を問診させていただいた上で、この方には妊娠しやすい体づくりと着床しやすい子宮内膜の環境作りを目標に、漢方薬を飲んでいただきました。月経2週間前から服用していただいたのですが、体がとても温まり汗が出るようになったと 喜んでいらっしゃいました。

 次の周期は排卵誘発剤を引き続き使いましたが、低温期の体温が理想的になり卵胞の発育がスムーズになりましたので、期待できる状態だとお話したところ、2周期目に妊娠されました。病院治療と併用できるのも、漢方薬のいいところです。不妊症で悩まれている方は、とても増えています。クリニックでのホルモン治療や高度生殖治療を長い間続けていらっしゃる方が、治療の方向性に不安を抱えていらっしゃいます。この先、どのような方向性があるのか、ちょっと立ち止まって一緒に考えてみませんか?

日本中医薬研究会会員 日本不妊カウンセリング学会会員 こだいら漢方堂 大塚みどり

2009.04.06